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第64話 もう一度、お兄さんと呼んでくれ

作者: 東雲明
last update 公開日: 2026-10-28 13:01:47
 ヴィネラの口元から笑みが消えた。踏み荒らされた落ち葉を靴底が噛み、二本の短剣が薄暗い森の光を拾う。片方は姉ちゃんの喉元へ、もう片方はその脇を抜けて俺たちへ届く角度だった。

 俺はミユウの背を引き寄せた。腕の中の身体は力なく重く、四枚の白い翼が遅れて揺れる。地面に触れそうな羽根の下へ手を差し入れ、根を踏んで立とうとした瞬間、肩の傷が引きつった。

「ぶぅー!ぷぷぅー!!」

 甲高い声が張り詰めた空気を裂いた。葵の腕の中で、白い生き物が泣いている。葵は落とさないよう抱き締め直し、その様子と姉ちゃんを見比べた。

「この子が、『魔法を使っておばさんをやっつけて!』って言ってるみたい」

 ヴィネラの眉が跳ね上がる。言い返す代わりに、その身体が前へ沈んだ。

「姉ちゃん、左の刃も来る!」

 俺が叫ぶのと、美咲の手元に光が集まるのは同時だった。指の間から伸びた輝きが一本の杖を形作る。姉ちゃんは目を見開いたが、迫る短剣から顔を背けなかった。滑りかけた柄を両手で握り直し、斜めに構える。

 守護の杖を包んだ光へ、最初の刃が叩きつけられた。

 耳の奥まで響く衝突音。足元の落ち葉が円を描いて吹き飛び、姉ちゃんの
東雲明

傷ついた龍夜とミユウを守るため、美咲と葵が初めての魔法を発動! ヴィネラの猛攻を跳ね返す姉の守護と、二人の傷を癒す妹の祈りが見どころです。姉妹の活躍が生む爽快感と、目覚めないミユウの手を握る龍夜の切ない想いをお楽しみください。今回もおもしろいと思われましたらせびブクマ、評価、レビューいただけますと泣いて喜びます。

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